胃のかたち
上田信治による俳句研究。
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俳句に似てるもの
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抒情性とは(改)
抒情性とは、なんだろう。

「抒情」は、辞書によると「感情をのべること」となっているが、これは、じっさいの語の使用範囲をカバーしていないと思う。

たとえば、怒りを述べることは、抒情性をもちうるだろうか。
あと「抒情的な音楽」はアリなのに「抒情的な映画」といわれると、筋なしのダメ映画が想像されるのはなぜか。

さて。

これは単なる珍説なのですが、日本人はどっかで「抒情」「情緒」を、ごっちゃにしてしまったのではないだろうか。
「江戸情緒」とか「情緒てんめん」とか言うときの「情緒」です。

音も似てるし、「抒情」の「抒」が、パッと見、字義の判らない字だというのが、きっとよくなかった。「叙情」なら、詩を「叙情」「叙事」と二分する分類用語だということで、誤解の余地がないんですが。

「情緒」は、辞書には「感情をひきおこす雰囲気」とあるので、いわゆる「抒情的」「抒情性」にぴったり当てはまる。あと、さっきあげた例でいえば、怒って雰囲気を出すことはむずかしいし、「フンイキ映画」と聞いたら、見る気がしないのも当然…。

秋桜子は「俳句に短歌的抒情を持ち込んだ」と言われますが、そこは「短歌的情緒、あるいは短歌的ムードを持ち込んだ」と言ってもらったほうが、ぼくはしっくりきます。秋桜子は、たしかに情緒てんめんだけど、想いを述べることは、多くない(特に初期は)ですから。

評論集『魅了する詩形』の中で小川軽舟さんが「抒情詩としての俳句」ということを書いていて。やはり広辞苑の「感動や情緒を述べる」「ほぼ詩と同義」という解説からスタートしていたので、ちょっと同義反復的にグルグルしていた部分があった。俳句も近代詩の一分野である以上、みんな抒情詩のはずだ、とか。

でも「抒情」=「情緒」「抒情詩としての俳句」=「情緒のある俳句」ということであれば、それは、素質がある人がすればいいという話で終ってしまう。
そして、もちろん俳句は、そういうのばっかりじゃない。
「俳句」07/1月号を読む
○巻頭・特別作品32句「鳥影」正木ゆう子

  初春の九条をもて宝とす

前書きに「憲法」とある。「葱」だったらよかったのに。

○特別作品32句「七人」小澤實

  跨線橋ポスター攻めや虎落笛

「ポスター攻め」という言いつづめ方が独特。(去年は「ソーセージころがし焼き」などがあり)「ささと鳴る天蚕の繭振りみれば」「漆喰壁に枯蟷螂や首直角」のような下五のだめ押しなどもあり、ともかく一句の言葉量・熱量を増やしてゆこうという行き方。あまりに無理な言い方の切迫感に、おかしみがただよいますが、「澤」3月号の「しぐるるやかなしきものに跨線橋」みたいなのも好きです。なんか「跨線橋」が、股火鉢みたいだ。

○特別作品21句「寒立馬」小原啄葉

  吹雪く中人のかたちの雪歩む

有名な句に「海鼠切りもとの形に寄せてある」「土用芽や土葬の土の余りたる」とか、去年も「胸押してくる一枝より剪定す」とかあって、この作者、物からふっと生命を抜いちゃうみたいなことをするので、こわいです。ところで「海へ出る雲を遠見の寒立馬」って、去年の年鑑で見ましたけど。「行き違いになってしまった場合は御容赦ください」というやつでしょうか。

○一億人の季語入門(三) 長谷川櫂

季語と季題の違いを、定義されています。季語は「季節の言葉」であり、季題は「題になった季語」だそうです。長谷川さんは「や」の定義も、やってらっしゃいましたよね。

○「観察」竹中宏

  上下に抽斗左右に抽斗ナイアガラ
  草のインテリ草の王、草の黄

かっこいいですね。この作者、旧字を使われてるんですが(「草」でいえば、くさかんむりの真ん中が開いている)そのわりに「抽斗」や「百日紅」にルビを打たれていて、いったい、どういう読者を想定しているのか。

○「我思ふ、故に」仁平勝

  我思ふ故に湯ざめして我あり

「魚座」が終巻して、どうされるのかな、と思っていたのですが、なんか、元の仁平さんに戻っちゃってます。

○合評鼎談

1月号の、松本てふこさんの「読初の頁おほかた喘ぎ声」について(すごい句だ)。櫂未知子さんが「作者は職業柄、そういう本を読まざるを得ない」と発言されてます。僕はむしろ「家でも読んでるのか」と思いました。

けっこう、今月は、読みどころがありました。
俳句に似てるもの
俳句に似てるもの。

ボンナイフ。
剃刀状の、四角い刃が、プラスチックのさやに折りたたまれて入っている。
児童が鉛筆をけずったり、消しゴムで彫刻をしたりするものです。

Bon! enough なんちゃって。
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