胃のかたち
上田信治による俳句研究。
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似たものさがしとしての俳句
取り合わせの句は、しばしば似たもの捜しに似る。

   乳牛に無花果熟るゝ日南かな    飯田蛇笏

「無花果」と「乳牛」の乳房は、似たものどうし。むちむち張りきって白い汁が出る物どうし、仲良く。熱く熟れている物どうし、仲良く。日南も。

   春暁や水ほとばしり瓦斯燃ゆる   中村汀女

「水」と「瓦斯」の火。ばーばー出てる物どうし、仲良く。一見正反対の二つは、その勢いと台所での位置においてパラレル。そして水火の結合と「春暁」が、これも似たものどうしで、全体が入れ子になっている。冷たく熱くて明るい物どうし、仲良く。

   紙の箱ドライアイスの煙出る    長谷川櫂

「紙の箱」と「ドライアイス」。白くて味のない物どうし、仲良く。「ドライアイス」という自然状態では存在しない物質の、しかもその「煙」。そんなものとペアにされて、白い「箱」も、物狂おしくなる。虚の世界の匂いのする物どうし、仲良く。

   蟇の子のつらなり孵る牡丹かな   下村槐太 

あまり似ていない「蟇の子」と「牡丹」。しかし連れ添った夫婦は顔が似てくるもの。こうしてペアにしてみると、「牡丹」の花弁は、粘液をまとった「蟇の子」ようにぷるぷるした物だった気がしてくるし、でかいオタマジャクシは「牡丹」のように豪奢な物だった気がしてくる。ぷるぷるして豪奢なものどうし、末永く仲良く。

取り合わせは、物に対する認識を、皮一枚めくるように働く。と、その下から、むちむち、ばーばー、ぷるぷると、オノマトペの横行する質感の世界が現れる。

メカニカルで、無思想で、幼児退行的で……アブナイ文芸。

   砂掘れば肉のごとくに濡れてをり   阿部青鞋
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